生徒から国語のレポートの参考にしたいのでっと相談がありました。「先生の道徳的価値観の基盤を教えて。」「…それって長くなるやつだよ。暫し待たれよ。」ということで儒教は孔子の教えだけど、道徳的価値観から広く捉えて中国古典から普段大切だなと感じている言葉を送ります。
【其の鋭を挫き、其の粉を解き、其の光を和らげ、其の塵に同じうす。】
この世の中を生きていくには、鋭い部分は失くした方がいい。複雑なことばかり考えるのも良くなくて、きれいに光るものがあったら、意識的にそれをぼかして塵と溶け合うように生きよう。という意味。「其の光を和らげ、其の塵に同じうす」は「和光同塵」といって「光」は才能・能力、「塵」は標準的なレベルのことを指します。例えば、私も大学を出た後、大阪で営業をしていたけれど、会社員生活を送る中で、大切に感じていたことはホウ・レン・ソウ、報告・連絡・相談。組織の中で長く成果を上げて昇っていく人はチームプレーがうまい。二十代で、やり手とか大器と称された人が皆、大成するかというとそうじゃない。組織はチームプレーで成り立っていて、それは個人や大きな企業でも同じ。必ずどこか他人と繋がっていて、仕事のパートナーだったりする。例えば仕事を発注しているからとか、上下の関係で相手を使うという考え方はよくないと思っています。私はお客様以外の仕事でかかわりのある人たちとは水平な関係で仲間、一緒に仕事を造っていくパートナーだと思っています。例えばHPの制作会社とか、広告代理店とか、今日は明王台高校の教え子が営業をしていてびっくりしたり、教材会社とか教育ネットの先生方とかみんな仲間。自信をもつのはいいけれど、偉そうにしない。だからいつも丁寧に応対するし、失礼なこともしない。でももっと仲良くなりたい、親しくなりたい人とはコミュニケーションをしっかりとって時間もかけて気軽に連絡できるようにしていただいています。
【三人行けば、必ずわが師あり。】
孔子がここで語っているのは、「三人で道を歩いているとする。他の二人からは、必ず教えられることがあるはずだ。」ということ。自分を磨いてくれるのは、学校の勉強だけではなくて、社会に出たあとも、どんな環境の中に身を置いても自分を磨いてくれる材料は転がっている。孔子は「その善なるものを選びてこれに従い、その不善なるものにしてこれを改める。」と付け加えている。つまり、優れた人からは積極的にその良い点を学べるし、そうではない人からは反省材料を与えてくれる。どんな環境でも、必ず学ぶべきことがあるし、自分を磨いてくれる上での師がいる。向上心があれば何とかなるということ。孔子は貧しい家庭に育ち、早くから自分で働いていかないといけなかった。そういう孔子だからこそ、周囲の人々や生活の中での見聞をすべて勉強での材料、つまり師にした。孔子の生活感覚が分かるよね。
【天の時は地の利にしかず、地の利は人の和にしかず。】
仕事を成功させるためには、①天の時:実行のタイミング②地の利:立地条件③人の和:内部の団結、の3つの条件が揃わなければならないとされている。この三要素は現代でももちろん必要で、当時すでに孟子はこの中で最も大切なことは「人の和」だといっている。「小さな城を包囲して攻撃しても簡単には陥落しない場合がある。攻撃している以上、当然、天の時をとらえているはずだけど、それでも勝てないのは、天の時も地の利にはかなわないからだ。城壁が高く、堀も深い。装備も優れ、兵糧も十分にある。それでも城を捨てて敗走する場合があるのは、地の利も人の和に及ばないからだ。仕事でも勉強でも将来を見越して事に取り掛かる必要がある。この先、必要とされる分野であるのか、伸びる企業や事業であるのか。とくに人の和がないと成功は難しいということだと捉えています。
中国古典に限らず古来より、今に至るまで名言は多く残されているから、その時の自分を奮い立たせてくれる言葉や将来にわたって良い影響を与えてくれる言葉は大切にしてゆきたいです。一見、相反する名文が実はどちらも人生には必要だったりすると思います。バランス感覚が大切なんだと感じています。あとバルタザール・グラシアンの賢人の知恵も読んでみて。
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